2023/02/07 |
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慢性腎臓病(CKD)と漢方の考え方 |
慢性腎臓病はCKD(Chronic Kidney Disease)とも呼ばれ、腎機能が徐々に低下し、血液を濾過して尿をつくる糸球体に異常が生じる病気です。この糸球体は一度壊れると、二度と再生しません。だからこそ早期発見と早めの対策がとても大切です。またCKDは早期では治療で回復しますが、腎臓がある一定レベルまで悪くなってしまうと、自然に治ることはありません。
日本では推計1300万人、20歳以上の約8人に1人はいるとされ、【新たな国民病】とも呼ばれています。
初期には自覚症状がほとんどないため、慢性化しやすい病気です。
ただ進行すると【倦怠感・貧血・立ちくらみ・夜間頻尿・尿たんぱく(尿が泡立つ)・息切れ】などの症状が表れます。また水分をうまく排出できないため、【むくみやすく体重増加】がおきます。
放置すれば、どんどん進行するため、腎不全や、脳卒中、心筋梗塞などのリスクも高まります。
■他の病気との関係性
以下のような病気があると、腎機能の低下につながるため注意が必要です。
・糖尿病
・高血圧症
・脂質異常症(メタボリックシンドローム) etc…
いずれの疾患も腎臓に負担をかけることで、腎機能を悪化させます。また病気ではありませんが、加齢も大きな要因の一つ。腎機能が低下しやすい50代以降は特に注意が必要です。
■西洋医学的な治療法
治療には、生活習慣の改善と並行して、薬物療法【降圧薬や利尿薬、脂質異常症治療薬、ステロイド、腎性貧血治療薬、カリウム吸着薬、リン吸着薬】や、進行すると【透析療法や腎臓移植】を行う場合があります。
■漢方の考え方
漢方では、CKDには以下の要因が関与していると考えられています。
①五臓の『腎』が関与
漢方で考える五臓の腎は、西洋医学的な腎臓の働きのほか、成長・発育・生殖に関与し、生命エネルギー(腎精)を蓄えていると考えられています。
また体液の代謝全般にも関与しており、不要な水液を尿として膀胱に貯留して排泄する働きがあります。
腎が弱ると腎精にも影響がでるため、体全般のエネルギーが不足し、腎臓の働きも低下します。
そのため漢方では、『補腎薬』を用いて腎の働きを回復します。
②瘀血 (おけつ)、痰飲(たんいん)等による弊害
CKDは血液や体液中の老廃物が、腎臓の糸球体で根詰まりを起こす病気です。
漢方ではこの老廃物を、瘀血(おけつ)や痰飲(たんいん)と呼び、五臓の失調により気・血・水のバランスが崩れることで生じると考えられています。
この老廃物を取り除くためには『活血薬(かっけつやく)』や『化痰薬(かたんやく)』といった漢方薬を用います。
③余剰な熱の影響
瘀血(おけつ)や痰飲(たんいん)などの余剰なものが体内で長期間いすわると、体内で『余剰な熱』をうみだすことがあります。
この『余剰な熱』が、腎臓の糸球体などを侵して慢性的な炎症が持続すると、CKDになります。
余剰な熱=慢性炎症をなくすことは、CKDの重症化の予防にとても重要です。
漢方では、余剰な熱をとるため『清熱利湿(せいねつりしつ)』の方剤等を用いることがあります。
■まとめ
漢方は古来より、病気になる前の半健康状態を意味する未病(みびょう)を治すのが得意な医療として重宝されてきました。病気になってしまう前に体質を改善し、未然に防ぐという意味では、CKDは漢方治療に向いている疾患と言えます。
慢性腎臓病でお悩みの方は、お早めにご相談ください。