2020/10/15 |
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秋に増える『長引く咳』 根本から見直しを |
■ 咳の原因
秋は空気の乾燥に加え、気温や気圧の変化が激しく、咳がでる方が多くなります。
その要因としては、以下の様なものがあります。
・花粉(ブタクサなど)、ハウスダスト
・ウィルスや細菌の感染
・寒暖差、雨などの気象変化
・飲酒、喫煙、ストレス etc…
空気の乾燥で体の潤いが不足すると、皮膚粘膜を守る『バリア機能が低下』するため、異物が進入しやすくなり、それが刺激となって咳がでます。また寒暖差により『免疫に関与する自律神経のバランス』が崩れやすいことも、原因の一つと考えられます。
■ 『長引く咳』について
『長引く咳』にも色々なタイプがあり、気管支喘息をはじめ、咳喘息や後鼻漏からくる咳、風邪などの感染後の咳など様々あります。
それぞれ特徴はありますが、秋口に増える咳は、一般的に花粉や寒暖差などのアレルギーが引き金になることが多く、咳喘息のように慢性化すると、ステロイドによる吸入や気管支拡張薬などを用いる場合があります。
※咳が長引く前に、未然に防ぐこと(未病:みびょう)が大切です。
■ 漢方での考え方
漢方では『長引く咳』は、外邪の侵入を防ぐ【衛気:えき】の低下や、体に必要な潤い【津液:しんえき】の不足などが、要因として考えられています。
衛気(えき)は、体の免疫とも深い関わりがあり、皮膚や粘膜細胞を活性化させ、外界の刺激から体を守ったり、体を温める働きがあります。
津液(しんえき)は、体を潤す水液のこで、体の表面だけでなく内側から潤す働きがあります。 胃腸(≒脾)で作られ、肺の働きで全身をくまなく循環します。また腎で再吸収・排泄されるため、脾(≒胃腸)・肺・腎が弱ると、潤いはうまく作れず、全身に行きわたりません。
※暑い夏が続くと、エネルギー(気)や潤い(津液)が消耗してしまうため、『秋バテ』を起こしやすくなります。
そのため体の免疫もおちやすく、粘膜などのバリア機能が低下すると、咳が長引く原因になることがあります。
今起きている症状を抑えることも重要ですが、『長引く咳』の場合は、体の根本から回復することも、大変重要になります。
■ 漢方での対策
秋に長引く咳には、衛気(えき)の働きを助ける生薬を用います。様々な生薬がありますが、その中でも黄耆(おうぎ)はよく用いられます。
黄耆には、補気作用(気:エネルギーを補う力)があり、とくに体表や粘膜周辺の元気づけに使われます。
その他、排毒作用(皮膚・粘膜にある毒素を出す)や、汗の出すぎを抑えたり、尿をだして浮腫みをとる働き等があります。
~方剤例~
衛益顆粒(えいえきかりゅう)
また津液(しんえき)を補うものとして、補陰薬(ほいんやく)といわれるものを用います。補陰薬は、体に必要な潤いや栄養を与える働きがある他、五臓(この場合とくに肺・腎)の働きを高めてくれます。
~方剤例~
亀鹿仙(きろくせん)
■ まとめ
毎年 季節の変わり目になると、必ず咳が続いたり、雨天や気温変化ですぐ咳がでてしまう様な方は、その場しのぎの対策だけでなく、その根本にある 体の原因に目を向け、改善することが大切です。
※『長引く咳』に心辺りのある方は、ぜひ一度ご相談下さい。