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2023/09/16
『不眠と漢方』

 メジャーな国民病『不眠』

不眠症

「日本人の5人に1人が不眠症」 「成人の約30%が不眠」と言われるほど。

睡眠は疲れた身体と心をメンテナンスして、エネルギーを補充する大切な時間。そのため、よく眠れない状態が続くと疲労が溜まり、心身に様々な不調が現れます。不眠による不調を感じている人は積極的に対処して、ぐっすり眠れるよう体質改善を心掛けましょう!

適切な睡眠時間は、一般に6~8時間が目安とされています。しかし、実際には年齢や体質、活動量などによって個人差があるもの。そのため、睡眠時間が短くてもすっきりと疲れが取れ、生活に支障が出ない場合もあります。

 

一方、睡眠時間の長さに関わらず、寝つきが悪い、熟睡できないといった状態が続き、心身の不調や日中の眠気などを感じる場合は「不眠症」と考えます。
不眠の主な症状には、布団に入っても寝つきが悪く眠るまでに時間がかかる「入眠困難」、眠りが浅く夜中に何度も目が覚めてしまう「中途覚醒」、
早朝、予定の起床時間よりずっと早く起きてしまい、その後眠れなくなる「早朝覚醒」、睡眠時間は十分なのに眠りが浅く、ぐっすり眠った感じが得られない「熟眠障害」があり、その原因は加齢やストレス、環境変化などさまざまです。
中医学では睡眠は精神状態の影響を受け精神が穏やかに静まることでよく眠れると考えます。そのため、精神や情緒の安定と関わる「心」「肝」に不調があると、不眠を招く要因に。
また、精神の安静を保つ「血(けつ)」も大切な要素ですが、心・肝は血の状態とも関係しているため、睡眠との関わりが深い臓器と言えます。
その他、脳の働きや老化と関係する「腎」の不調も不眠を招く要因になります。

不眠症からくる不調には日中の眠気やだるさ、集中力の低下などがあり日常生活に大きく影響します。症状が長期化すると改善もしにくくなるので、不調に気づいたら早めの対処を心掛けましょう。

 

 

 

【症状別「不眠症」の体質ケア】

不眠症は体質を整え、生活習慣を改善することで緩和に繋がります。“早く眠らないと・・・!”というプレッシャーが症状を悪化させてしまう事も多いので、あせらずゆっくり日々の養生で体質を改善していきましょう!

 

 

■入眠困難

不眠症の中でも最も訴えが多く、中医学では主に「肝(かん)」の不調から起こる症状と考えます。
肝は精神の安静を保つ「血(けつ)」を貯蔵したり、「気」の流れをコントロールする疏泄作用があるため、精神状態を安定させる働きがあります。そのため、肝の機能が低下すると不安感やイライラなど精神的不調が起こりやすく、なかなか寝つけなくなってしまうのです。
このタイプは過剰なストレスで「気」の巡りが停滞し、体内に熱がこもりやすい事も特徴。熱がこもるとイライラや興奮を招きやすいので、こまめなストレス発散を心掛け、肝の働きを整えましょう。ハーブティーやアロマなど、香りを上手に使って気持ちをリラックスさせるのもおススメです。

 

気になる症状

寝つきが悪い、初期の不眠症、イライラ、怒りっぽい、憂うつ感、ほてり、のどの渇き、のどの閉塞感(梅核気)、胸の詰まり、舌の乾燥、舌辺がやや紅い
☆ストレスや悩みが多い人は参考に。

 

食養生:香り、酸味、涼性の食材で肝を整える

・菊花・金木犀の花・ねむの花・ジャスミン・ラベンダー・ミント・紫蘇・陳皮(みかんの皮)・たけのこ・ふきのとう・セロリ・菜の花・ゴーヤ・わかめ・牡蠣・粟・山査子・酢・レモン・梅 など

 

 

■中途覚醒(熟眠障害)

夢が多い事も特徴で、中医学では主に「心」の不調から起こる症状と考えます。
心は精神の安静を保つ「血(けつ)」を全身に巡らせる臓器。また、“心は神明を蔵す”とも言われ、精神状態や脳の働きとも密接に関わっています。
そのため、体内の「気(エネルギー)」や血を生み出す「脾胃(胃腸)」の働きが低下し、気血の不足から心の働きが弱くなると、脳の機能に影響し、不安感や悩み等で熟睡しにくくなってしまうのです。
このタイプも加齢とともに起こりやすくなるので、更年期以降の人はご注意を。日々の食事でバランスよく栄養を取り、不足しがちな気・血を養いましょう。また、しっかり栄養を取るためにも「脾胃(胃腸)」を元気に保つ事が大切です。

 

気になる症状

眠りが浅い、熟睡できない、夜中に目が覚める、夢が多い、慢性的な不眠症、不安感、動悸、めまい、物忘れ、冷え
☆月経中、産後、病後、過労、貧血気味の人も参考に。

 

食養生:甘味、温性の食材で気・血を養う

・黒砂糖・黒豆・ブドウ・プルーン・ライチ・枸杞の実・棗・ゆり根・卵・小麦・粟・にんじん・ほうれん草・ウナギ・かつお・レバー・赤ワイン(少量)など

 

 

■早朝覚醒

中医学では主に「腎」の不調から起こる症状と考えます。
腎は睛明エネルギーの源「精」を蓄える臓器で、脳や五臓六腑の働きを根本から支えています。そのため、腎が衰えると脳や全身の機能が低下し、睡眠も上手く取れない状態に。また、腎は潤いの源でもあるため、腎が弱くなると潤い不足で体内の熱を十分冷ませなくなることも。その結果、精神を司る「心」の熱が過剰になり、精神不安などで睡眠障害が起こりやすくなります。
腎は加齢とともに衰えていくため、このタイプは高齢者に多いことが特徴。腎を強くすることは老化予防にもつながるので、栄養を十分取る、身体を冷やさないなど、日頃の積極的なケアを心掛けましょう。

 

気になる症状

早朝に目覚める、物忘れ、夜間頻尿、腰痛、耳鳴り、驚きやすい、のぼせ、冷え、疲労感、倦怠感、舌の色が淡い
☆更年期・中高年の不眠症、慢性疾患のある人も参考に。

 

食養生:木の実、黒色、粘りのある食材で腎を養う

・黒ゴマ・黒豆・黒きくらげ・きのこ類・山芋・もち米・海藻類・はすの実・胡桃・栗・クコの実・桑の実・ナマコ・エビ・羊肉 など

 

 

 

暮らしの養生

〇生活リズムを整えましょう。日中にしっかり活動することで、夜の安静につながります。

 

〇夕方以降のカフェインなNG。寝る前は鎮静効果のあるハーブティーがおすすめです。

 

〇就寝前のパソコン、テレビ、スマートフォン、テレビゲームは避ける

 

〇アルコールは一時的な入眠効果はありますが、眠りが浅くなります。

 

〇夕食は寝る3時間までにすませましょう。腹八分を心掛け、食べすぎて胃腸に負担をかけないように。

 

〇適度な運動は質の良い睡眠につながります。ただし寝る直前の運動は避けましょう。

 

〇寝る前の入浴で身体を温める。ぬるめのお湯で副交感神経を優位に。

 

〇枕や布団、照明、アロマやヒーリングミュージックなど、眠りやすい環境を整えることも大切です。

 

 

 まとめ

今回は不眠症のタイプを何種類かご紹介しましたが、必ずしもこれらのタイプに当てはまる訳ではなく、複数のタイプが合わさった不眠の方もいらっしゃいます。そのため、使用する漢方薬も体質や症状などによって異なるため、不眠でお困りの方は、自己判断で薬を服用するのではなく、まずはご相談ください。

 

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