2023/07/08 |
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季節はずれのカゼが流行 ~漢方で免疫を整える~ |
新型コロナウィルスも第5類へと移行し、暑さも後押ししてか、マスクを外す方が増えてきました。
ただそれと同時に、今まで陰をひそめていた様々なウィルスも活発になり、今年は季節外れのカゼが流行しています。驚きなのは、インフルエンザやRSウィルスといった、本来冬場に増える風邪ウィルスが、流行していること。この背景には、コロナ禍で崩れてしまった『免疫』が関与していると考えられています。
漢方では、免疫の働きの一つに『衛気:えき』が関与していると考えます。衛気は、食べ物の栄養(水穀の
精微)から作られ、体内のいたることろを巡り、全身を守るバリア機能のような働きをします。
ここで重要なのは、衛気は、食べ物から作られるということ。
胃腸の働きが落ちると、消化吸収も悪くなり、十分な栄養を得ることができず、衛気を作ることができません。そのため、外部の様々な刺激から、体を守ることができず、病邪に犯されやすくなります。
※カゼを繰り返し引く方は、胃腸を立て直すことが大切です。
また最近では、腸の中に大量の免疫細胞(体の約70%)が発見され、『腸管免疫』という言葉も生まれました。近年になって発見されたことが、何千年も前の知識に通ずるのは本当に驚きです。
因みに『衛気』は、五臓の肝・肺といった、他の臓腑の力を受けて全身を巡ります。
免疫を整える際は、胃腸だけでなく他の『五臓のバランス』も考慮しながら対処する必要があります。
ただ『胃腸の働きが、免疫の中心にある』ということは、忘れてはいけません。
豆知識 | 夏カゼが長引く原因は、冷たい物の取りすぎによる 、胃腸機能の低下(=免疫低下)が大きな要因と考えられています。 |
カゼに負けないようにするには、以下のことが大切です。
①カゼを未然に防ぐ
②カゼを引いても早く回復する
①については、先程述べた衛気を高めることで、細菌やウィルスの侵入を防ぎます。衛気を高める方法としては、胃腸を整えたり、衛気の働きを強めることを行ないます。また五臓のバランスが崩れている場合は、体質に合わせて立て直していきます。
方剤例)衛益顆粒、補中益気湯 など
②については、カゼのタイプを知ることが大切です。それを理解しないと『どんなカゼにも葛根湯』といった誤った知識を植え付けることになり、漢方の効果を充分に発揮することはできません。カゼは感染初期の対応が大切。長引かせないためにも放置せず、正しい処置を行ないましょう。
~カゼのタイプ~
カゼには【風邪・寒邪・熱邪・湿邪・燥邪・暑邪】があり、外感六淫とも呼ばれ、体の外から侵入します。
その際、主に関わるのが風邪(ふうじゃ)。他の邪気とくっつき、様々な症状を起こします。
風寒邪タイプ | 別名:青いカゼ。症状のポイントは悪寒。他に 発熱、頭痛、体の痛み、鼻水、鼻づまり、咳、くしゃみ など。症状の変化が早いので、体の奥に入り込む前に、対処することが大切。ゾクゾクとしたら、葛根湯のような温めて発散させる漢方薬を服用しましょう。 ※体力が低下している際は、別の方剤を用いる場合があります。 |
方剤例:葛根湯、麻黄湯、桂枝湯、川芎茶調散 など |
風熱邪タイプ | 別名:赤いカゼ。症状のポイントは発熱。他に 多汗、口渇、のどの痛み、咳 など。風寒邪同様、症状変化が早いので、早めに対処することが大切。熱があるため、葛根湯のような体を温める方剤は✖! 熱を発散させる辛涼解表薬を服用します。 |
方剤例:銀ぎょう散、小柴胡湯加桔梗石膏、麻杏甘石湯、板藍根 など |
暑湿邪タイプ | 夏カゼタイプ。ポイントは胃腸の弱り。食欲低下、下痢、頭重、倦怠感(悪寒や発熱もあります)など。紫蘇など香りの良い生薬の入った方剤で治療します。 |
方剤例:清香散、藿香正気散 など |
燥邪タイプ | 秋カゼタイプ。ポイントは乾燥からくる咳(空咳)。のどの渇き、手のひら・足のうらが熱くほてる、痰がでない・または痰に血が混ざる など。乾燥が原因で起こるため、体に潤いを与え、熱や咳を鎮める方剤を用います。 |
方剤例:麦門冬湯、桔梗石膏湯、滋陰降火湯、八仙丸 など |
虚弱タイプ | 免疫が低下し、邪気が侵入しやすいタイプ。①で述べたように、体のバリア機能が低下し、 カゼを引きやすくなっているため、衛気の働きを高める方剤で、未然に予防することが大切。 |
方剤例:衛益顆粒、参蘇飲 など |
漢方は、以下のような方にオススメです。
☑ カゼが長引く
☑ カゼを繰り返し引いてしまう
☑ カゼを引いたあと不調が残る
☑ カゼの症状が重い
☑ カゼの引き始めにすぐ治したい
☑ カゼの予防
漢方は、即効性がないイメージですが、カゼの初期には大変効果があります。
またこじらせたカゼの回復や予防など、用途も広いのが特徴です。
ただカゼのタイプや体質を誤り、見当違いの漢方薬を用いてしまうと、効果がないどころか、症状を長引かせる原因になることもあります。
季節外れのカゼに負けないためにも、漢方で免疫を整えることが大切。
上記に心当たりのある方は、お気軽にご相談ください。