2023/03/26 |
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ヘルペス(帯状疱疹・単純疱疹)と漢方の考え方 |
帯状疱疹は、水痘(水ぼうそう)・帯状疱疹ウィルスが原因で起こる炎症性の皮膚疾患で、水痘に感染したことがある方にしか発症しません。
普段は神経の根元に水痘ウィルスが潜伏していますが、免疫が弱まると活性化して症状が現れます。
神経に沿って、通常顔や体の左右どちらか片方にしか現れないのが特徴で、脇の下~胸部・腹部、顔、頭、背中、腰、股間によく見られます。
症状が現れる前は、皮膚にピリピリとした痛みが起き、その後、激痛を伴う赤い発疹や水ぶくれが帯状に広がり、しばらくすると、かさぶたとなって痛みが消えます。
通常は2~3週間で治りますが、免疫低下を起こしている方(高齢者、糖尿病、膠原病などの病歴がある方)などの場合、痛みが慢性化することがあり、その場合は『帯状疱疹後神経痛』になります。
『帯状疱疹後神経痛』になると、ひどい場合10年以上激痛に悩まされることもあり、難聴や耳鳴り、顔面神経マヒを伴う場合があります。後遺症を起こさないためにも、しっかりと治しきることが大切です。
また帯状疱疹は50代以降に発症しやすく、感染した方の約4~6%しか再発しません。
・帯状疱疹とは異なるウィルスが原因でおこる
・神経に沿ってではなく、皮膚粘膜に現れる
・何度も再発することがある
・感染力が強い
・後遺症が少ない
・病院で処方される抗ウィルス薬が、帯状疱疹と同じ(※ただし用法用量が異なる)
帯状疱疹も単純疱疹も『ヘルペス』と呼ばれるため、混同されやすいですが、厳密には異なるウィルスが原因で起こります。また同じ抗ウィルス薬を用いることから『帯状疱疹が再発した』と勘違いされることもありますが、再発を繰り返す場合は、単純疱疹の場合が多くあります。
一番の違いは、症状や後遺症の度合いで、激しい痛みが残る場合は、帯状疱疹の可能性があります。
また単純疱疹の場合、感染力が強いため、ヘルペスを疑われた場合は、タオルなど別にし接触は控えましょう。
※再発を繰り返しやすい『口唇ヘルペス』は『単純疱疹』に分類されます。
※ヘルペスは、花粉症や風邪などがきっかけで発症することがあります。普段から、自己免疫を整えることが大切です。
漢方では、ヘルペスは以下の原因が考えられます。
・肝経火毒
五臓の肝の機能失調から、体内に熱毒を生み出すことで起こります。また春先に発症しやすいのも特徴です。
【症状】
疱疹の赤みや硬さがある、痛み(初期では痒み)、熱感、口渇、苦み、冷たい物を好む、怒りっぽい、偏頭痛、尿黄色、便秘 など。
【方剤】
熱を冷まし解毒する『瀉火利湿顆粒』『清営顆粒』などを用います。
・脾経湿熱
脾(≑胃腸)の働きが弱まると未消化物が停滞して、体の中に湿熱が生まれます。その湿熱が皮膚や筋肉に停滞すると、以下のような症状が現れます。
【症状】
疱疹が黄色く白い、水疱が柔らかく破れやすい、ジュクジュクしている、化膿して痛む、食欲不振、お腹が張る、軟便、下痢 など。
【方剤】
体内に生まれた湿熱を取り除き、胃腸の働きを改善する『茵陳五苓散』や『柴苓湯』などを用います。
・気血不足
高齢者、病中病後、極度の疲労などが原因で、気血が消耗し起こります。
【症状】
疱疹がはっきり現れない、慢性化、疲れやすい、息切れ、顔色が白い、めまい、食欲不振 など。
【方剤】
気血を補うことで、衛気(体のバリア機能)の働きを改善する『衛益顆粒』や『十全大補湯』などを用います。
・肝鬱気滞、瘀血
強いストレス、精神疲労、睡眠不足などが原因で、気血の滞りが生まれて起こります。
【症状】
疱疹が消えても局部に痛みが残る、胸や脇の辺りが張る、イライラ、怒りっぽい、偏頭痛、めまい、舌が暗紅色 など。
【方剤】
気血の流れを良くし、滞りを改善する『加味逍遙散』『疎経活血湯』『イーパオ』などを用います。
ヘルペスは免疫と深い関わりのある病気です。免疫と病気の戦いは、西洋医学では病因の排除や症状の緩和を重視しますが、漢方は今ある症状を抑えるだけでなく『免疫を整えること』を重視します。病気が長引いて慢性化したり、再発を繰り返す場合、漢方は非常に有効な手段です。
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