| 2025/11/25 |
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| 尿もれ(尿失禁)の漢方対策 ~腹圧性尿失禁について~ |
尿もれ(尿失禁)には様々なタイプがありますが、その中で最も多いのが「腹圧性尿失禁」。
現在の治療では、第一選択薬がなく、骨盤底筋訓練(PFMT)のような非薬物療法が中心で行われており、
八味地黄丸や牛車腎気丸などの漢方薬を、補助的に用いられるケースも見られます。
ただ、残念なことに「年単位で飲み続けても変化が感じられない」という声も、少なくありません。
――出産や老化などが原因だから、どうしようもない、、、
――若い時から、尿もれパッドのお世話になりたくない、、、
――人との会話中、ふとした瞬間に尿がもれそうで怖い、、、
そんな様々な声に対して、漢方の視点からどんなアプローチができるのか解説します。
要因は様々ありますが、出産・加齢(更年期)などを節目に、骨盤底筋がゆるんでくることで、尿を蓄える力が弱まり、咳やくしゃみなど、ちょっとした刺激で尿もれを起こしてしまいます。
(漢方では「遺溺:いでき」や「膀胱咳」と呼ばれることがあります)

・ 妊娠・出産
・ 加齢(コラーゲンの減少、筋力低下など)
・ ホルモンバランスの変化(特に閉経後:エストロゲン減少)
・ 慢性的な腹圧の上昇(肥満、慢性的な便秘、前立腺肥大など)
↓
骨盤底筋(=膀胱と尿道を支えるハンモックのような筋肉)のゆるみ
↓
膀胱と尿道の位置がずれて、締まりが悪くなる
骨盤底筋=クッションが弱まることで、膀胱にかかる圧力を分散・吸収できなくなる
↓
腹圧性尿失禁
漢方では、腹圧性尿失禁が起こる背景に、『五臓の脾(胃腸)・肺・腎の機能低下』が関係していると考えられています。
~代表的な体質~
✅脾肺気虚(中気下陥:ちゅうきかかん)
腹圧性尿失禁が起こる、主な要因の一つと考えられています。
機序:
脾(胃腸)と肺は、体に必要なエネルギーをつくり、全身へ巡らせる役割を持っています。漢方では、脾には内臓を正しい位置に「持ち上げて支える力(昇提作用)」があり、肺には全身の気で膀胱をコントロールし、腹圧に対抗する力をサポートする役割があります。この力が弱くなると、咳・くしゃみなどの腹圧に耐えられず、体を支えきれずに尿がもれやすくなると考えられています。
体質:
・カゼを引きやすい
・アレルギー体質がある(花粉、アトピーなど)
・内臓下垂がある(胃下垂、子宮脱、脱肛など)
・食後に眠たくなる
・胃腸が弱く、筋力が弱い
・偏食や不規則な食生活、冷たいものを摂りすぎる
・悩みすぎたり、考えすぎたりする傾向がある など
漢方によるアプローチ:
漢方では、黄耆(おうぎ)や升麻(しょうま)など「気を持ち上げる生薬」を用いて、骨盤を支える力を底上げしていき、さらに、五味子(ごみし)など「漏れを引き締める生薬」を補うことで、体の内側から“上げる+支える+締める”三つの方向からケアしていきます。
※蒼朮・白朮などの生薬も補助的に用いることで、全体の効果を引き上げます。
✅腎気不固(じんきふこ)
全ての尿もれのタイプには、腎の衰え(腎虚)が関与していると考えられています。
機序:
「腎」は水分代謝や排尿をコントロールする働きがあります。腎のエネルギーが失われると、固摂(引き締める)力が足りなくなり、腹圧がかかった際に尿を保持しきれなくなる「腎気不固」となり、尿もれを起こしてしまいます。
体質:
・冷え症
・生まれつき体が弱い
・足腰が弱い(骨がもろい)
・最近もの忘れが多い
・過度な運動や肉体労働、慢性的な過労状態にある
・加齢(更年期など)、病中病後、産後
・難聴、耳鳴りが続いている
・生殖機能の低下(インポテンツ)、脱毛が気になる など
漢方によるアプローチ:
冬虫夏草・紫河車・山薬・菟絲子などの 「腎を補い、内側から支える生薬」 を用いて、体のエネルギー源を底上げし、さらに、益智仁・桑螵蛸 などの生薬で、尿の“締める力”を支え、下半身の力を養う+漏れを防ぐ 二つの方向からケアしていきます。
※その他にも、以下のようなタイプも存在し、それぞれアプローチが異なります。
・前立腺肥大や子宮筋腫などの塊が、膀胱を圧迫 → 消腫散結の方剤などを使用
・便秘(冷え・潤い不足など)により、膀胱を圧迫 → 温中散寒、滋陰潤燥の方剤などを使用
(上記の体質との組み合わせによって起こる場合があります)
尿もれの原因の多くは、冷えやストレス、水分代謝の不良など、複数の要素が重なっていることが
ほとんどです。先ほど述べた、体質もそんな要素の一つ。
漢方が効かないと感じるケースの多くは、尿もれだから八味地黄丸といった、症状に対して薬を選ぶ
選び方に問題があることが多くあります。
~漢方薬の選び方~
①尿もれが起きている原因を調べる
②体の土台が崩れているのか、一時的な症状なのか(季節、産後、など原因が明確)を見極める
③個々に合った改善へのアプローチ(漢方だけでなく養生も含め)
本来、漢方薬の選び方は、病名だけでは判断しません。
カゼに葛根湯だけですべての症状が改善されないのと一緒で、その背景にある体質、環境など様々な要因から、自分に合った漢方薬を選ぶ必要があります。当店では、漢方に詳しい知識をもつ専門のスタッフ(国際中医専門員)が、詳しく問診して改善へのアプローチだけでなく、その後のケアも、しっかり対応いたします。
「立ち上がる瞬間」
「笑った瞬間」
「荷物を持ち上げた瞬間」――
そんな“ふとした動き”にヒヤッとした経験がある方は、お気軽にご相談ください。