| 2025/07/19 |
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| 片頭痛と光過敏 ~まぶしい光が片頭痛の引き金に~ |
片頭痛が起こるきっかけには、気圧や気温、ストレスなどが挙げられますが、光による目の刺激「光過敏」によっても、痛みが起こることがあります。
実際、片頭痛の方の約半数近くが、光によって不快な症状を経験したと言われており
光をまぶしく感じたり、物が歪んで見えるといった視覚的な症状は、片頭痛の前兆(閃輝暗点など)、発作の初期に現れる「感覚過敏」として一般的に知られています。
発症する機序は完全に解明されていませんが、現在有力視されているのは以下の2つ
✅三叉神経説
頭部にある三叉神経が、目から強い光の刺激を受けることで活性化して、脳内の血管を拡張させて痛みが起こると考えられています。臨床の場ではトリプタン製剤が、この機序に基づいて使用されています。
✅脳の過敏反応説
痛みを抑える脳の働き(疼痛抑制系)がうまく機能しなかったり、反対に痛みを増幅させる機能が過剰に働いたりすることで、脳が痛みに対して敏感に反応することがあります。痛み止めを常習的に飲み続けることで、効果が表れにくくなる「薬物乱用頭痛(MOH)」も、脳の過敏反応を起こすきっかけになると考えられています。
光過敏は、漢方では(畏光:いこう、羞明:しゅうめい)などと呼ばれています。
こういった反応は、単一の原因ではなく、様々な病機の組み合わせや体質によって起こる「症状の一つ」として捉えられています。
中国の文献でも「畏光」は「目の症状の一つ」として、また「頭痛の随伴症状」として頻繁に言及されており
『証治準縄』(明代の医書)によると「畏光的病因主要是因為火燥血熱,因為病属陽分,所以看到亮光時當然澀痛畏避,所以喜歡陰黑的地方。」とあり、火(熱)や血熱が畏光の原因となることを示唆しています。
また、現代の漢方の考え方では、畏光はしばしば「乾眼症(ドライアイ)」や「片頭痛」の症状の一つとして研究されており、これらの疾患の体質と合わせて治療が行われています。
その他にも「五臓六腑之精気皆上注于目:五臓六腑の精気はすべて目に注ぐ」という言葉から、臓腑の機能失調(特に肝、脾、腎)が畏光を起こすと考えられています。
このように、「畏光」は単独の原因で症状が現れることはなく、他の症状や体質と合わせて発症します。

~片頭痛と同時に現れる症状~
漢方で考えられる主な体質と病機(病気の原因とメカニズム)には以下のようなものが挙げられます。
①痰熱内擾(たんねつないじょう)
病態:胃腸が弱り飲食物の消化吸収が落ちると水分がうまく処理されず、体に余分な水(痰湿)が溜まってしまいます。余分な水は、ストレスや熱と結びつくと「痰熱」というネバネバした湿気に変わり、それが神経の伝達を悪くして、炎症性の強い頭痛や光過敏を起こします。
関連症状: 頭が重くズキズキする頭痛、光過敏が顕著、めまい、吐き気、胸苦しさ、口の苦味、不眠、イライラ、精神的な不安など。舌苔が黄色くべっとりしている場合もあります。
代表的な方剤例:温胆湯(うんたんとう)
②肝陽上亢(かんようじょうこう)
病態::ストレスや過労などが長引くと、五臓の肝の「潤い=陰液」が消耗し、「興奮=熱」を落ち着かせる力が弱まります。 すると、「エネルギー(陽気)」がコントロールを失って頭の方へ昇り、頭痛・めまいなどを起こします。また「肝は目に開竅する」という言葉があり、目に関するトラブルが多いのも特徴です。
関連症状: 頭全体が締め付けれるような頭痛、光過敏、目の充血(目の奥の痛み)、不眠(寝入りが悪い、夢が多い)、めまい、のぼせ、口渇、焦り、イライラといった傾向があります。
代表的な方剤例:能活精(のうかっせい)、釣藤散(ちょうとうさん)
③腎陰虚による火旺(いんきょかおう)
病態: 慢性疾患・加齢・過労などは、腎陰(潤いと滋養の根本)を消耗する原因になります。腎陰が不足すると、水の力で熱や炎症を鎮める力が弱まるため、頭部に熱が上昇し、頭痛や耳鳴りなどを起こすことがあります。この時に生まれる熱は、「虚熱」や「虚火」と呼ばれ、肝陽上亢の根本原因となることも多いです。
関連症状: 慢性的な頭痛(ジンジンと脈うつ感じ)、光過敏、めまい、耳鳴り、目・口・喉の乾燥、手のひらや足の裏のほてり、寝汗、腰や膝のだるさ、不眠(寝つきが悪く、途中で目が覚める)など
代表的な方剤例:亀鹿仙(きろくせん)、双料杞菊顆粒(そうりょうこぎくかりゅう)
④気血不足(きけつふそく)
病態:体に必要な「エネルギー(気)」や「栄養(血)」が不足している状態。②③と比べ、初期に現れやすいのが特徴です。そのため、他の病態が起きる時は、気血不足をベースに様々な症状が現れます。
関連症状::疲れた時に頭痛がひどくなる、全身の倦怠感、顔色不良、めまい、立ちくらみ、動悸、不眠、目の乾燥、疲れやすい、集中力低下など。
代表的な方剤例:麦味参顆粒(ばくみさんかりゅう)、心脾顆粒(しんぴかりゅう)


養生の工夫
光過敏を和らげる環境づくり
明るすぎる照明や強い直射日光を避け、間接照明や調光可能な照明を使う。パソコンやスマホの画面はブルーライトカット機能を活用し、まぶしさを軽減しましょう。外出時はUVカット・偏光サングラスの使用もおすすめです。
ストレス管理とリラクゼーション
ストレスは片頭痛を悪化させる大きな要因です。深呼吸や瞑想、適度な運動を取り入れて心身の緊張をほぐしましょう。十分な睡眠も不可欠です。
光過敏は、片頭痛の原因となる重要な症状のひとつです。
光による目の刺激を、「片頭痛と関係がないと思っていた」、「気にしてなかった」という方もおられますが
実際は、約半数以上の方が、目の不快感による片頭痛を経験しており、自分では気づいていない大きな要因の一つとなっています。片頭痛が起こる原因は、個々によって様々あります。
当薬局では、専門的なカウンセリングを通じて一人ひとりに最適な漢方薬をお選びして、服用後も経過を丁寧にフォローいたします。片頭痛の改善だけでなく、再発予防までしっかりケアしたい方は、お気軽にご相談ください。
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