健康診断や超音波(エコー)検査で見つかることがある「甲状腺嚢胞(こうじょうせんのうほう)」。
その多くは良性と診断されることの多い病気ですが、首元に圧迫感があると、たとえ良性であっても心配に感じる方は少なくありません。
とくに『息苦しさ』や、液を抜いても『何度も繰り返す』といった状態は、心理的な恐怖だけでなく、毎回針を注入して抜く肉体的な負担も生じてしまいます。
では、なぜ何度も再発してしまうのでしょうか?
ここでは『何度も繰り返し生じる甲状腺嚢胞』について、漢方でどんなことができるのか、西洋医学の視点もふまえ『再発しにくい体づくり』について解説します。
■ なぜ甲状腺嚢胞ができ、何度も繰り返すのか?
甲状腺嚢胞は、何らかの理由で「傷ついた甲状腺のスペースに、行き場を失った浸出液が溜まってしまう疾患」です。繰り返し発生する背景には、主に3つの原因が関係していると考えられています。
① 組織のスキマ(空洞化)
血管が密集している甲状腺では、ストレスや緊張などによって血流障害や「内出血」が起きると、一部の組織が栄養不足で壊れ、中に「空洞(隙間)」ができることがあります。この組織の崩壊を放置してしまうと、もとの状態に戻りにくくなることがあるので注意が必要です。
② 液体の渋滞(コロイドや古い内出血)
その空洞を埋めるように、周囲の毛細血管から体液(血清)が漏れ出たり、ホルモンの元(コロイド)が排出されずに溜まったりします。
※病院で抜いた液が「黄色や琥珀色」なのは、古い内出血の残骸や組織液が停滞しているため。この色のついた浸出液の中には、炎症物質(サイトカイン)が高濃度に含まれており、それらが血管透過性を高めたり、さらなる内出血を起こす原因になることがあります。
③ 袋の壁の硬化(再発の悪循環)
一度液体が溜まると、袋の壁同士がピッタリとくっつき「線維化」して徐々に硬くなります。硬くなった壁は体の一部として定着してしまうため自然吸収されにくくなり、病院で一度液を抜いても、その硬い袋の中に再びじわじわと液体がしみ出し、何度も再発を繰り返す原因になります。
■漢方の甲状腺嚢胞の考え方
漢方では、甲状腺嚢胞のことを、「癭瘤(えいりゅう)」と呼びます。
「癭瘤(えいりゅう)」は、首の前面が腫れたり、塊ができたりする病気の総称で、甲状腺嚢胞、甲状腺腫 などがこれに含まれます。
また「経絡(けいらく)」の視点では、首の前面は「肝経(かんけい)」や「胃経(いけい)」が通っており、そこに「瘀血(血の滞り)」や「痰湿(余剰なゴミ)」が溜まることで、甲状腺嚢胞ができやすくなると考えられています。
ちなみに、五臓の肝は、ストレスの影響をうけやすいため、普段から強いストレスを感じている方は、肝の経絡が詰まりやすくなります。
また胃の経絡は、お通じと関係があります。偏食や間食、夜食の習慣などで、腸内環境が乱れると『痰湿』を生む原因となり、それが胃の経絡の流れを滞らせます。
■ 漢方が目指すもの:3つの滞りを解きほぐす
漢方では、浸出液が溜まる背景には、「気・血・水」の3つの滞りがあると考えます。
① 気の巡りを良くする「理気(りき)・補気(ほき)」
「喉元は、五臓の肝の経絡」が流れており、ストレスなどの自律神経の影響を受けると、肝が乱れやすくなると考えられています。「肝は気の流れをコントロールする力」があるため、そこが乱れると、嚢胞内に溜まった浸出液を押し流す気の力が弱まり、溜まりやすくなります。必要に応じてエネルギーを補う「補気薬」や、気の巡りを良くする「理気薬」などを用いる場合があります。
② 血の滞りを防ぐ「活血(かっけつ)」
甲状腺嚢胞の中には、内出血で溜まった古い血(ゴミ:瘀血)が、固まって増えていくことがあります。
適度な大きさで血が固まれば、出血をおさえてくれますが、溜まりすぎると周囲を圧迫させたり、炎症物質が生じてしまう場合があります。その場合は、一旦「活血薬」や「破血薬」を用いて、瘀血を掃除することがあります。(※急性期・慢性期によって対応が異なります)
③ 水が溜まるのを除く「化痰(かたん)」
体の水分代謝が弱まると、喉元に余分な浸出液「痰湿(たんしつ)」が溜まることがあります。余剰な浸出液は喉元を圧迫させ、何度も繰り返ししてしまうため、「化痰薬(かたんやく)」や「利水薬(りすいやく)」などで、浸出液が溜まるのを予防したり排出を促す漢方薬を用いることがあります。
※3つの滞りを解消することで、『再発しにくい体づくり』を目指します。
■まとめ
漢方薬単独で「すべての嚢胞を消失させる」のは困難ですが、「再発の頻度を下げる」「増大のスピードを抑制する」という点においては、非常に有力な方法の一つです。
「変性」した組織を元通りに再生させることは、現代医学でも容易ではありません。しかし、「これ以上壊さないこと」「新たな再発の芽を摘むこと」は、漢方の得意とするところ。
『これ以上大きくならないかな? 本当に自然になくなるかな?』
『良性が悪性に変わらないかな?』
『穿刺吸引による経過観察の繰り返しがつらい…』
『エタノール注入療法(PEIT)は、できれば避けたい』
『やっぱり甲状腺の一部 or 全摘手術しないといけないのかな…』
何度も繰り返す甲状腺嚢胞でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
