咳に用いる漢方薬の選び方 ~知っておくべき注意点~

目次

■はじめに

今年は、咳や痰などが続く病気が増えていますね、、、

夏ごろに流行していた『百日咳』や『マイコプラズマ肺炎』などは、11月に入った現在も下火になる様子がなく、耐性菌やウィルスの変異株などの情報もではじめました。

そこで、咳のタイプ別に用いる漢方薬をご紹介するとともに、

漢方薬だから安心・・・ではなく、『副作用や注意点』などについても解説します。

 

 

 

■咳の分類

漢方では、咳に用いる漢方薬を、「外感」と「内傷」の大きく2つに使い分けます。

 

✅外感による咳の特徴
・風邪などの感染症の初期~中期に見られる
・咳の症状などから、寒・熱・乾燥のタイプに分けて対応する
・すぐに症状が変化するため、見極めが難しい(発症期間が短いものが多い)
・悪化すると内傷の咳へ移行することがある

 

✅内傷による咳の特徴
・体力や免疫が落ちている時に起こりやすい
・咳が長引くと、喘息などに移行することがある
新型コロナウィルス百日咳の様な強い感染症の場合、直接、邪気が体内に侵入し内側を傷つけることがある(直中:じきちゅう)

 

また咳は、咳だけでる場合と、痰を伴う咳があり、漢方では「咳嗽:がいそう」と呼ばれています

以下の項目では、外感、内傷ごとに、どんな咳を鎮める漢方薬があるのか、代表的なものをご紹介します。

 

 

 

■咳のタイプと漢方薬の例

例)外感の咳に用いる漢方薬

証型 主な症状 推奨方剤(例)
風寒襲肺 – 咳声が低くこもって濁って聞こえる
– 痰や鼻水が透明でさらさらしている
– 寒気を感じながら発熱がある
– 発汗がない
– 舌に薄い白苔が付着
– 脈が表面に浮いて張りがある
  麻黄湯(かぜの初期)
小青竜湯(湿がある場合)
麻黄附子細辛湯(寒邪が盛んな場合)
風熱犯肺 – 咳が荒く呼吸が速い
– 痰が黄色くねばねばしている
– のどが渇き、口が渇く
– 発熱があり風寒を嫌う
– 舌苔が薄い黄色
– 脈が浮いて速い
  涼解楽T(風熱の症状を同時に治療)
桔梗石膏湯(燥を潤し熱を清める)
風燥傷肺 – 乾いた咳で痰が出ない
– または少量の血痰が出る
– のどがかゆく痛む
– 鼻やのどが乾燥する
– 舌が赤く潤いが少ない
– 脈が細く速い
  杏蘇散(表邪を発散し肺を潤す)

 

 

例)内傷の咳に用いる漢方薬

証型 主な症状 推奨方剤(例)
痰熱郁肺 – 咳のたびに痰が黄色く粘り気がある
– 痰がうまく切れず不快感がある
– 胸が詰まるように苦しい
– 口渇がある
– 舌苔が黄色くべたつく
– 脈が滑り速い
 清肺湯(肺を清め痰を化す)
麻杏甘石湯(肺の熱を瀉し清める)
五虎湯(熱を瀉し平喘する)
肺陰虚耗 – 乾いた咳が続き痰が少ない
– のどが乾き口渇がある
– 声がしわがれる
– ほてりや夜間の発汗がある
– 舌が赤く潤いが少ない
– 脈が細く速い
滋陰降火湯(陰を滋養し火を降ろす)
養陰清肺湯(陰を養い肺を潤す)
麦門冬湯(肺を潤し咳を止める)
肺気虚寒 – 咳き込むと息切れしやすい
– 声がか細く弱い
– 風寒を受けやすい
– 顔色が淡白
– 舌が淡白
– 脈が弱く力がない
平喘顆粒(気を補い咳を止める)
神秘湯(気を補い痰を化す)
回復期・残咳 – 回復期でも咳が止まらない
– 夜間に咳が悪化する
– 胸にかゆみを感じ痰は少ない
– 睡眠を妨げる
竹茹温胆湯(陰を養い清熱して安神する)
紫河車製剤
冬虫夏草製剤

 

 

 

■副作用・注意点

1. 薬剤の重複による副作用のリスク

漢方薬は天然の生薬からできていますが、中には西洋薬と似た作用を持つ成分が含まれていることがあります。特に、複数の薬を併用する場合、成分の重複により副作用のリスクが高まることがあります。

 

特に注意すべき成分の例

●「麻黄(まおう)」:交感神経を刺激するエフェドリン類が含まれており、西洋薬の風邪薬や咳止め(気管支拡張薬)と重複すると、動悸、不眠、発汗などの副作用が強く出ることがあります。

●「甘草(かんぞう)」グリチルリチンが含まれており、過剰摂取により偽アルドステロン症(むくみ、血圧上昇、脱力感)を引き起こす可能性があります。他の漢方薬や、グリチルリチンを含む風邪薬、のど飴などとの併用に注意が必要です。

 

 

2. 体質(証)に合わないと効果は期待できない

西洋医学の薬が「病名」に対して処方されるのに対し、漢方薬は「体質や症状の現れ方(=証)」に合わせて選ばれます。これを漢方では「弁証論治(べんしょうろんち)」と呼びます。

体質に合わない漢方薬を服用すると、全く効果がないばかりか、場合によっては症状が悪化したり、新たな不調(胃もたれ、下痢、食欲不振など)が現れたりすることがあります。

 

漢方における「証」とは

漢方では、その人の体力や病気の勢いを「虚実(きょじつ)」で、寒がりか暑がりかを「寒熱(かんねつ)」で、病気が体のどこにあるかを「表裏(ひょうり)」で判断します。これらを八綱弁証(はっこうべんしょう)と呼び、個々の体質や病状を詳しく把握します。例えば、同じ「咳」でも、体力がある(実証)人で炎症性の強い(熱証)咳と、体力が衰えている(虚証)人で冷えが原因の(寒証)咳では、全く異なる漢方薬が用いられます。

例)

●実熱タイプの咳・・・麻杏甘石湯

●実寒タイプの咳・・・小青竜湯

 

 

3. 妊婦・授乳婦、小児、高齢者の服用について

・妊娠・授乳中:漢方薬の中には、妊娠中や授乳中でも使用できるものがありますが、より安全性を確保するため、使用を慎重に検討すべき漢方薬もあります。該当する場合は、必ず事前にお伝えください。

・小児:大人の用法・用量をそのまま適用できないため、体重や症状に合わせた適切な量で服用する必要があります。また漢方薬の中には、小児に適応のないものもあるため、必ずお伝えください。

・高齢者:一般に生理機能が低下しているため、麻黄や甘草を含む漢方薬など、副作用が出やすいものは特に慎重に服用する必要があります。また病気の影響で、代謝や排泄が悪くなっていることもあるので、心当たりがある際は、必ずお伝えください。

 

 

4. 長期間服用しても改善しない場合

数日~1週間程度服用しても咳が改善しない場合や、症状が悪化する場合は、漢方薬が合っていないか、より重い病気が隠れている可能性があります。その場合は、速やかにご相談ください。

 

 

 

■まとめ

同じ咳の症状でも、漢方薬の種類は様々あり、体質や既往歴などで用いるものも異なります。

また、漢方薬だから安心ではなく、副作用や注意すべき点もあります。

とくに、つらい症状を早く抑える漢方薬は、西洋薬同様、効果が早い利点はありますが

それだけ体への負担がかかるものもあります。

 

「風邪の後の長引く咳が治らない」「自分の咳のタイプが分からない」

 

今回の記事を参考に、自分に合った『咳止めの漢方薬』を選ぶ一助になれたら幸いです。

またご自身で、どんな漢方薬が良いのか、わからないことがありましたら、お気軽にご相談ください。

漢方に詳しい専門スタッフ(国際中医専門員)が、くわしくお調べして、あなたに合った最適な漢方薬をご提案します。

 

 

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