2023/04/06 |
---|
見落としがち!?『春のおなかの不調』 |
春になると、何故かおなかの調子が悪い、ガスがやたらと溜まる・・・、便秘や下痢、腹痛など、おなかに不調を感じることはありませんか? 季節の変わり目 とくに春の体調変化は、1年の中で最も大きく感じると言われています。そんな症状の中でも、意外と見落としがちな『おなかの不調』。そこには、以下の要因が関わっています。
花粉や黄砂、細菌、ウィルス等が腸内に侵入すると、アレルギー反応や感染症から、腸が炎症を起こすことがあります。炎症が起きると腸が腫れて、むくんだ様な状態になり、便が腸内に残りやすくなるため、ガスが発生しお腹が張ったり、腹痛、便秘や下痢などの症状が現れます。
漢方では『衛気(えき)』の不足が原因で、腸が炎症を起こすと考えます。衛気とは、体を守る『防衛の気』のことで、体を保護するバリア機能のような働きがあり、異物が侵入するのを防いでくれます。ところが、その働きが低下してしまうと、細菌やウィルス、アレルゲン(アレルギーを起こす物質)から体を守ることができず、腸が炎症を起こしていまいます。
そのため、衛気を補う漢方薬で、腸粘膜を修復・強化し、異物の侵入を防ぎます。
また腸に炎症が起きている場合は、紫根製剤などの、清熱解毒作用のある方剤を用いて症状を抑えます。
春は入学、入社、新学期、転勤など、環境の変化が多いため、ストレスから自律神経のバランスを崩しがちです。自律神経は、腸の動きをコントロールする働きがあるため、バランスが崩れると、不規則に動いたり、動きが悪くなることがあります。
漢方では、自律神経の失調から、気の流れが滞ったり、不足することで、胃腸の働きが低下し『おなかの不調』を起こすと考えます。
気とは、生命を維持するために必要な『エネルギー』のようなもので、以下のような働きがあります。
・推動作用 ⇒ その名の通り『推し動かす』作用。血液やリンパ液など推し動かすことで、生命活動を維持します。また体の成長や発育にも関与します。
・温煦作用(おんくさよう) ⇒ 体温を維持します。
・防御作用 ⇒ 体を異物から守る作用のことで、免疫に関わります。
・固摂作用(こせつさよう) ⇒ 血液がもれでたり、汗・尿・精液が過剰に漏れ出ないようにします。
・気化作用 ⇒ 体液を汗や尿などに変える作用があります。
また春は、気が体の上部へ昇りやすく、頭部に滞ると イライラ、焦り、不安など精神にも影響を与えます。
漢方薬としては、気が不足している時は補気健脾薬(ほきけんぴやく)、気の滞りがある時は疏肝理気薬(そかんりきやく)・芳香開竅薬(ほうこうかいきょうやく)などを用いることで、気の滞りや不足を改善します。
春は昼夜の寒暖差や雨の影響などから、胃腸が冷えて働きが弱まり、腹痛や下痢、吐き気、消化不良、食欲不振などを起こす原因になることがあります。これは『冷えて胃腸の働きが悪くなる場合』と、『元から胃腸が弱い方が冷えて悪化する場合』とがあります。
漢方では、体のエネルギー不足が原因で冷えが悪化している『陽虚:ようきょ』が原因と考えます。陽虚は気の不足である『気虚:ききょ』がさらに進行し悪化している状態で、一般的に病中病後、高齢者や女性、筋肉量の少ない方などにみられます。
また春先に増える陽虚は、冬に風邪などの感染症で体力が消耗したり、エネルギーを十分に蓄えることが出来ていない方などにも見られます。
漢方薬としては、胃腸への血流を良くし温める方剤を用いたり、胃腸の気を補うことで働きを改善する方剤などを用います。また冷えがひどい場合は、補陽薬を加えるなど、体質に合わせた方剤を選びます。
春のおなかの不調は、その背景に体力や免疫の低下などが隠れていることがあり、気付かないうちに慢性化していることがあります。不調を繰り返す方は、根本の原因を見直し改善することが大切。気になる方は、お気軽にご相談ください。