2023/02/25 |
---|
酒さと漢方の考え方 |
■どんな病気?
酒さは、中高年に多くみられる慢性皮膚疾患です。顔にしか現れず、脂腺(皮脂を産生する場所)が豊富な
部位に生じるためオイリーな肌質の方が多く、鼻頭、両頬、額、あご等に皮膚の赤み(紅斑)がみられるのが特徴です。そのため、初期症状では脂漏性皮膚炎と類似していることがあります。
またステロイド剤の長期使用で発症する『酒さ様皮膚炎(別名:ステロイド酒さ)』もありますが、漢方での対応は基本的に変わりません。
■症状
■原因
原因については不明ですが、体質的な要因【遺伝・女性ホルモンのバランス失調・甲状腺機能の低下など】に加え、以下の要因が関与していると考えられています。
・外的刺激(紫外線、化粧品、極端な暑さや寒さ、風邪、香辛料、ダニ など)
・腸内環境の悪化(飲酒・カフェインの取りすぎ・偏食・香辛料のとりすぎ など)
・精神的ストレス
・激しい運動 等
酒さという名前から、お酒が原因のイメージがありますが、それ以外にも要因は複数あると考えられています。また極端な寒暖差でも発症することから、季節の変わり目は特に注意が必要です。
■西洋医学的な治療
・抗菌薬 ⇒ 内服・外用
・レーザー治療 等
腫瘤がある場合、毛包虫が検出されることがあるため、抗菌薬を用いる場合があります。また『酒さ様皮膚炎』の場合、ステロイドは症状が悪化するため基本的に用いません。(一時的に痒みや赤みを抑えますが
長期に使用するとリバウンドで症状が悪化するので使用は控えます)また皮膚を保護する目的でワセリン等の油脂性基剤を含むものを使用すると、日焼けの原因になる場合があるので、こちらも使用しません。
■酒さと漢方の考え方
漢方では酒さは、『血熱』や『熱毒』が原因と考えます。
血熱は上へ昇る性質があるため、頭部へ上り易く、それが長時間留まると熱毒へと変わり、酒さの症状を起こします。
そのため治則の第一段階では『炎症と毒素を取り除く』ことを優先します。方剤としては『清熱解毒』・『涼血袪瘀』等の漢方薬を用います。
第二段階に行なうのは、『繰り返し発症しない体づくり』です。酒さは外的因子の影響をうけやすく、少しの刺激で再発することが多くあります。繰り返さないためにも体質を見直すことはとても重要です。方剤としては、血熱や熱毒で体の内側が傷つき、虚証へ移行している場合がみられるため、五臓に合わせた『補剤:ほざい』を用いたり、内生した邪気を取り除く『化痰薬:かたんやく』や『活血薬:かっけつやく』等を用いる場合があります。
また状態によっては、第一・第二段階を同時に行なうこともあり、個々に合わせた対応を行なう場合があります。
■酒さをおこしやすい体質
酒さを繰り返し起こさないようにするためには、自分の体質を知ることが重要です。
体質の例としては以下のとおり
①肝鬱タイプ(実証) ⇒ ストレスの影響を受けやすく、気分のふさぎ込み、イライラ、ほてり といった症状が見られます。
②腎虚タイプ(虚証) ⇒ 甲状腺ホルモンの低下、女性ホルモンの失調、遺伝 などが関与。また代謝にも影響するため、水太りしやすく冷え症の方に多く見られます。
③脾虚タイプ(虚証) ⇒ 胃腸虚弱、下痢または便秘ぎみ、偏食が多い などの方に見られます。栄養の吸収・排泄が苦手なので、痩せ型またはその反対に、少食なのに太りやすい方等に見られます。
また上記のタイプは、それぞれ虚実に分かれています。 実証タイプは、エネルギー過多、虚証タイプはその反対で、エネルギー不足によって五臓の働きが低下することで、症状を引き起こします。また虚実どちらも、内生(ないせい)といって、体に余剰なもの※を生み出すことがあり、それらが酒さを起こす原因になることがあります。
※肝火(かんか)・・・ストレスや飲酒などで、内熱を生み出した状態。内熱が続くと肝血が不足し、虚証へ
移行することも。
※痰湿(たんしつ)・・・水分代謝の不良により生まれた副産物。
※瘀血(おけつ)・・・血の滞り。
こういった内的因子がある方に、外的因子(ストレス、寒暖差、偏食、飲酒など)が組み合わさることで、
繰り返し酒さを起こす体質が生まれると考えられます。
■まとめ
『酒さ』は、一度良くなったと思っても、少しの刺激で再発することがあります。目先の症状が軽くなると、つい完治したと思いがちですが、根本的な改善には至っていないことも少なくありません。
繰り返す症状でお困りの方は、お気軽にご相談ください。